プロヴァンスの贈り物

*キャスト&スタッフ
監督・製作:リドリー・スコット
原作:ピーター・メイル
音楽:マーク・シュトレイテンフェルド
出演:ラッセル・クロウマリオン・コティヤールアルバート・フィニーフレディ・ハイモア
2006年アメリカ映画

*ストーリー**************
ロンドンで多忙な毎日を送るマックスに、南仏プロヴァンスのシャトーに住んでいるヘンリーおじさんが亡くなった知らせが届く。十数年も疎遠にしていたヘンリーおじさんはそのシャトーでワイン造りを楽しんで暮らしていた。最も近い血縁者として遺産相続する事となったとなったマックスは即刻そのシャトーの売却を決め、手続きのために南仏へ。法的手続きの後にとんぼ返りでロンドンに戻るはずだったが…様々なアクシデントに見舞われておじの邸宅に短期間の滞在を余儀なくされる。その滞在で彼が得たものとは…
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映画作品の場合、何気ない作品を何気なく作ることは非常に難しいと思えるが、その何気ない、いかにもクセのない作品をリドリー・スコットラッセル・クロウの名コンビで作り上げてしまった、と感激してしまった。もちろん一見何気なく見える作品にはきめ細かな隠し味がここかしこにあり、作り手は何気なくなんか作っていられなかったであろう事はよくわかる…
まず驚くのが今回のキャスティングのラッセル・クロウ。今までのスクリーンでこんなにくつろいだり間抜けに見えるラッセル・クロウを見たことがない。それほどこの作品は見る人を癒してやまない魅力がある。
ロンドンの金融界で「敏腕トレーダー」の異名を取るマックス(ラッセル・クロウ)の忙しくエキサイティングな日々。エリートであり、勝ち組の生き方をしてきた彼には、一度たりとも自分の人生を疑ったり振り返ったりなどということはなかったはずである。そう、彼の人生は輝かしく、さらに自信に満ちている。
それがこの叔父の相続に関わって南仏プロヴァンスのシャトーを訪れ、さらにささいなトラブルからの、このシャトーから出られない一週間で、彼は人生を振り返り、さらに自分の生き方が正しかったのかどうかを考え始める。
自分を無にする事が出来たとき、彼の信念は新たな方向に向かい始める。そしてその決意は物質的豊かさから解き放たれた、心の温かさと孤独からの解放を彼に与える。たったこれだけのことだけれど、人間というのは容易にはその方向転換ができないし、自ら慣れ親しんだ長年の習慣を変える事には恐怖と苦痛が伴う。
これがこの、何気ない事のようで大変に大きなテーマなのである。
その、人としての豊かな熟成を助けているのが背景となる南仏プロヴァンスの溢れるような自然。明るい日差し、柔らかな風、ブドウ畑に立ち上る肥料の匂い、夜、暗闇に映える庭園の外灯。
時に、社会の大きな波に呑まれずに、自分自身の時間を止めてみる事も大切では…?と問いかけられた気がした…そんな作品。見終わった後に胸に広がるすがすがしさ、爽快感、近頃なかなかお目にかかれないキャラクターの作品。
是非DVDでご覧下さい。(1月11日発売)

 プロヴァンスの贈りもの