アイ・アム・レジェンド

*キャスト&スタッフ
監督・製作:フランシス・ローレンス
原作:リチャード・マシスン
脚本:マーク・プロトスビッチ
音楽:ジェイムス・ニュートン・ハワード
出演:ウィル・スミス、アリーシー・ブラガ
2007年アメリカ映画

*ストーリー**************
2012年、人間の姿が消え、死んだように静まり返るNYの街。この街で生活しているのはたった一人、ロバート・ネビルのみ。3年前に発生したウィルスによって人類は滅亡が目前のように見える。夜になればそのウィルスによって突然変異した肉食生物=ダークシーカー達が食物を求めて街中の生物に襲いかかる。愛犬サムと一緒に暮らしながらもウィルスに冒された生物への抗体を発見する研究を続ける伝染病学者ネビル。果たして人類滅亡に光はあるのか…
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1954年に発表されたリチャード・マシスンの同名処女長編であるSF小説の3度目の映画化。想像よりはるかに薄気味悪い作品で、当初見終わってから怒りに似た気分の悪さを覚えた。その原因は孤独感への恐怖だったように思う。徹底的に人間が出てこない作品である。ウィル演じるネビルは悲劇的に蔓延したそのウィルスに抗体を持っていて生き延びられている伝染病学者という設定。ネビルは孤独と闘いながら愛犬サマンサと自給自足の生活を送りながら抗体の研究を続けるが、自分以外に人のいない薄気味悪さの中でも決して希望を失わない。この作品での見ものは何といっても信じられないNYの街の風景。草はぼうぼう、たくさんの車が路上に放置されたまま埃をかぶり、その中を野生動物が時々往来する。本作は同地区において200日の長期にわたる区画封鎖撮影の許可を取った異例の作品なのだ。そこからさらにCGにより、人影をすべて排除している。映画史上例を見ないとも言われる、この圧倒的なゴーストタウン描写は猛烈なリアルさをもってスクリーンを覆い尽くし、見る者を見事に見たことのないNYへと連れて行ってしまう。しかもこのゴーストタウン、不健康さは微塵もなくむしろ草木が溢れるように成長して繁り、日差しはさんさんと降り注ぎ…といった具合に非常に健康的な風景になっている。が、しかし、そこに人っ子一人いない不気味さが、薄気味悪さをさらに強調する結果になっている。
監督のフランシス・ローレンスは映像作家として数々の受賞でミュージック・ビデオの監督としてのキャリアの方が先に有名になったが、記憶に新しいところでは2005年に上映された「コンスタンティン」で監督を務めている。そう言われると何となく孤高な雰囲気やミステリアスな映像などのタッチに共通の香りを感じた。

3度も映画化される作品、それは何といってもその原作に魅力があるに他ならず、その原作が1954年に書かれていた事も非常に興味深い。その当時なら全く想像を絶する世界が、今やそのCGの技術を駆使して逆にアナログ的な原始的な表現を徹底し、見事にリアルなバーチャルワールドとして体感できる。本作品は現代における再映画化の裏に、そういったCGテクニックの成熟を大いに感じられる見事な作品であり、さらにそのスタッフの熱意と原作・脚本とのコラボレーションの妙が作品をますます素晴らしいものにしていると言えよう。
そして言うまでもないが「幸せのちから」でアカデミー賞ノミネートとなったウィル・スミスの、極限での人間の心理の表現がナチュラルなのにシリアスで素晴らしい。
I am Legend