ベオウルフー呪われし勇者

*キャスト&スタッフ
監督・制作:ロバート・ゼメキス
脚本・制作総指揮:ロジャー・エイバリー
音楽:アラン・シルベストリ グレン・バラード
出演:レイ・ウィンストン(ベオウルフ)、アンジェリーナ・ジョリー(グレンデルの母)他。
2007年アメリカ映画
(c)2007 Warner Bros.Ent.All Rights Reserved
  
*ストーリー**************
6世紀のデンマーク。フローズガール王が盛大な宴を催す中に、醜く巨大な怪物グレンデルが姿を現す。人々を虐殺したグレンデルに頭を悩ます王は、褒賞を用意して討伐隊を募集。これに応じた戦士ベオウルフは、見事グレンデル撃退に成功する。戦勝を祝い再び華やかに繰り広げられる宴。しかし翌朝ベオウルフが目にしたのは、皆殺しにされた兵士たちの姿だった。彼はその犯人と思しきグレンデルの母親の元へと向かう。まばゆいほどに美しいグレンデルの母親は取引を申し出る…その取引とは…
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当初、ほとんどCGの作品、という事を知らずに見てしまい、すぐに後悔=やはり人間の表情などがゲームのCG描写のように見えてしまって…ところがストーリーが進むにつれてCG作品である事はどうでも良くなってきてしまった。それはなんといっても脚本が素晴らしかったから…
古代からずっと人間が抱えてきている欲望、煩悩との闘い、そして誘惑を断ち切れない弱さ、憧れとねたみの混沌とした気持ち…などを非常にきめ細やかに物語に盛り込んでおり、最後はヒーローと一緒に怪物退治に臨んでいるような一体感を覚え、興奮し、そして絶望し、そしてあいまいな悟りを感じたりして作品は終盤へと向かう。
ここでヒーローとして描かれている[ベオウルフ]は非常に人間的。英雄にもなりたいし、正義感も強く、ある種の虚栄心もなくはない。そして美しい女性にとても惹かれるし、それを敢えて隠しはしない。そして過ちがあれば公衆の面前でも、プライベートに女性の前でもきちんと謝る。
この作品は宣伝の時からなんといってもアンジェリーナ・ジョリーのそれはそれは美しい姿態が映し出されていてそれに期待する人も多かったのではないかと思われるけれど、そう、これはボディ・マッピングはしてはいるものの、CGの作品なのだからその辺は生々しさが軽減されている。とはいうものの、これだけの美しさを持った女性がその女性を武器に誘惑をしてきたなら、断れる男性ってどれぐらいいるだろうか、と考えさせられる。古代から美しい女性はトラブルの元。そして英雄ほどいとも簡単にそういった簡単な計略にひっかかる…それも作品は語っている。そしてそういった美しい女性に翻弄された男性=ヒーローは大抵非業の死を遂げるものだ。この作品ではその辺はストレートに描いているわけでもないが、人間の性、というものを深く描いていることは興味深く、それらは歴史を通しても今なお、変わる事のない、人間の背負った業なのか。とも思える。アンジェリーナ・ジョリーは美しさもさる事ながら、今回はその声も大変に魅惑的でまさに今絶頂期に入った女優、の風格が際立っていた。
壮大なスケールのCG作品だけれど、その精神的な奥深さの表現で大変楽しめる作品。
ベオウルフ公式サイト]