容疑者Xの献身

東野圭吾の世界の見事な表現
*キャスト&スタッフ

監督:四谷 弘
制作:亀山千広
脚本:福田靖
作曲:福山雅治
出演:福山雅治(湯川学)堤真一(石神哲哉)、松雪泰子(花岡靖子)、柴咲コウ(内海薫)

2008年日本映画(東宝

*ストーリー**************
帝都大理工学部物理学科の準教授・変人ガリレオこと湯川学(福山)は貝塚北署の掲示、内海薫(柴咲)に捜査協力を依頼され、科学的に実証している。ある日、大田区の大森スポーツ広場でしたいが発見される。被害者は全裸で指紋が全て焼かれ顔も鈍器で潰されていた。身元が判明してみると富樫慎二。富樫の経歴から元妻の花岡靖子に疑いがかかる。靖子は錦糸町でホステスをしていたが、夫と分かれてやっと資金を元手に現在は日本橋浜町弁当屋を経営している。靖子と娘の美里は江東区のアパートでの二人暮らし。警察が尋ねると二人にはアリバイがある。隣に住んでいた風采の上がらない高校教師、石神が通りかかり、彼が湯川学と同窓であったことがわかり事態は大きく解決に動いていくが…
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最近は邦画が元気がよい、と業界で言われている。ハリウッド映画のように巨額な費用をかけなくても質の良い作品が目白押しという、この邦画の中でもこの「容疑者Xの献身」は原作が光っているから映画作品自体が隙なく仕上がっている。東野圭吾の作品には「白夜光」など大ヒットテレビドラマ作品も多いが、一貫したあるテーマがあり、これも不条理なものを描いていると言えよう。事態が動き出すとどうにも止めることができない、それの始まりやきっかけはほんのふとした事のようには描かれているが、その実、そのきっかけはいつ出てきてもおかしくない人間の力では変えることのできないどうしようもない背景によるもの、というその呪いたくもなるようなディスティニー(運命)というようなものをいつも鮮やかに描き出してくる。特に今、油がのりきっている感のある堤真一の演技が素晴らしい。福山演ずる湯川学と同様に天才と言われながら、母親の寝たきり看護という事情でついに数学者になる道をあきらめ目立たない高校の教師として暮らさざるを得ない石神のその心を良く演じきっている。そんな陽の当たらない石神が安らぎと生きる勇気を感じた親子、その弁当屋の経営者、花岡靖子と美里を見るときの石神の視線がどうしようもないほど痛々しい…そんな石神を演じた堤真一は撮影中の姿勢悪い習慣のために体調を壊したとか。やはり徹底した俳優である。そして痛々しいと言えば花岡靖子と美里の親子も痛々しい。一生懸命生きているのに人生をやり直すことが困難な方に向かってしまう運命…ここにやはり東野圭吾のテーマがある。
作品のテンポ感が非常に良くて、原作を知らなくてもぐいぐいと引き込まれる脚本。キャスティング。見応えのある作品。是非オススメ♪

容疑者Xの献身