或る夜の出来事


私のバイブルとも言うべき愛する作品。

アカデミー主要5部門独占という記念すべき記録を打ち立てた永遠の名作。
★キャスト&スタッフ
監督:フランク・キャプラ
製作:フランク・キャプラ ハリー・コーン
原作: サミュエル・ホプキンス
脚本: ロバート・リスキン
撮影: ジョセフ・ウォーカー
音楽: ルイス・シルヴァース
出演: クラーク・ゲーブルクローデット・コルベール、ウォルター・コノリー
★ストーリー************
大金持ちの一人娘エリーは、父親に無断で勝手に婚約をするようなじゃじゃ馬娘。そのせいで父親にクルーザーで監視されるが、エリーは脱出し、婚約者に会いに出かける。ニューヨーク行きのバスに乗り込んだ。そのバスで失業中の新聞記者ピーターと知り合いになる。娘を探そうとする父親は新聞に一面にと彼女の記事を載せ、それを読んだピーターは特ダネをモノにしようと何食わぬ顔で世間知らずのエリーに手を焼きながらも愉快なヒッチハイクの貧乏旅行を続ける。やっとの思いでニューヨークに着いた二人。しかしそこで目にした新聞には“婚約を許す”と言う父親の記事が載っていた。が、その記事に困惑する二人……。そう、既に二人はお互いに惹かれ合う仲になってしまっていた!しかも二人はずっとプラトニックラプ。
最後は二転三転して非常にロマンティックに盛り上がる。
ブコメディの原点、とも言えるこの作品は「古き良き時代」を表現しきっていて、しゃれあり、人情あり、そして男女の細やかな心理描写が見事である。
今では考えられないが、じゃじゃ馬のエリーと言えども純潔を守り、さらにこの危なげな新聞記者、ピーター(クラークゲーブル)がそれにずっと協力しているのがいじらしい。二人は節約のために、宿は一部屋しか取れないが、それでも部屋の真ん中に綱を張り、そこに毛布をかけて「ジェリコの壁」と称してお互いのプライバシーを守り続ける。
最初軟派に見えているピーターが後半になるにつれ、観客には非常に父性本能の豊かな男らしい男に見えてくる。旅の途中に、さまざまなシーンで世間知らずのエリーに基本的な社会教育やたしなみを教え込んでいくピーター。エリーもピーターには従順にならざるを得ない。わがまま放題でヒステリックなエリーの心の奥に潜んでいた愛らしさ、をピーターは無意識にどんどん引き出していってしまうのが非常に印象的。結局、その無意識に引き出してしまったエリーの愛らしさを見て、ピーターは恋に落ちてしまうのだから、予想外の展開ってやはり面白い。

ファザコンの私にはもう、ピーター役のクラークゲーブルががエリーのパジャマのボタンを止めてあげたり、歯ブラシを用意してあげたり、とこまごま世話を焼くたびに、ただただ胸がじ〜〜ん…となり通しの作品であったが、デジタルの一切なかったこの頃の映画として、やはりこの作品は原作、脚本、キャスト、あらゆる角度から見ても王者の冠に輝いていると信じて疑わない。
(1934年 アメリカ映画)